映画『天地明察』の感想

なかなか時間が無くて見れていなかった映画をようやく見れたので感想をメモ。

あらすじ

江戸時代前期の囲碁棋士、安井算哲(後の渋川春海)の物語。
当時日本で使われていた暦は唐から伝わった宣明暦であり、年月を経ておよそ2日ほどのズレが生じていた。これを正すために、会津藩主にして将軍後見役保科正之から新しい暦を作る計画のリーダーに抜擢される。
安井算哲は緻密な天文観測と高度な和算の技術を駆使し、中国の授時暦を元に日本と中国との里差(経度差)を加味して、日本独自の大和暦(やまとれき)を完成させる。そして古来の暦を重んじている朝廷に新しい暦を認めさせるという困難も克服し、貞享暦として800年ぶりの改暦を成し遂げた。

感想

この映画、当初から内容としては面白そうだと感じていたが、主演がV6の岡田准一ということで何となく見るテンションになれずにいた。史実の安井算哲は数学、暦法、天文暦学、 神道といった様々な分野を当時の高名な学者に学んだエキスパートだが、それのイメージと主演があってないように思っていたが、実際に見てみてなるほどむしろそのギャップが良かった。つまり、算哲は全ての分野を納めたスーパーマンなのではなく、あらゆる分野に知見はあるがある意味でそれはいずれも中途半端なのだ。だから様々な人の助けを借りて時に苦悩しながら事を成し遂げていくその成長の過程がこそが魅力であり共感のポイントになっている。
彼を助けてくれる面々が和算の大家関孝和や垂加神道の山崎闇斎、さらに政治的なバックアップは水戸藩主徳川光圀と、そうそうたるメンバーというところがアツい。
ただ、冒頭テンポよく話が進むのに、後半はちょっとダラっとしちゃったかなという印象。また、忍者の襲撃を始め『この場面って必要だったかな』と思わせるシーンがあったり、『ここだけ監督が別人?』と思わせるような雑な演出があったりで、残念なところがちらほら。また、江戸城のシーンを姫路城で代用するといった時代劇にありがちな演出がなかったのは良かったのに、天体観測のための装置がちょっとありえない壮大な『カラクリ』だったりはどうだったのかなぁ…
とはいえ、北極出地(日本中をまわって北極星を観測する遠征)などでのちょっとしたお遊び要素も面白かったし、歴史を知っている人ならわかる小ネタも盛り込まれていたのは思わずニヤッとしてしまった。
というわけで、本格的な時代劇という感じではなく何となく画面がちょっとポップな感じではあるものの、映画として観た時には十分に楽しめる映画だったと思う。

ちなみに、映画を見る前段階では、大和暦(貞享暦)を作ったのが渋川春海であるという知識ぐらいはあったものの、彼が囲碁棋士であったということや徳川光圀の支援を受けていたという史実は知らなかったし、関孝和が大和暦の元になった授時暦の研究をしていたということもこの映画をきっかけで知ることができた。『食○かたつむり』とか『レン○ネコ』みたいな糞つまらない毒にも薬にもならないようなゴミ映画と違って、本作のように学びがたくさんある作品は映画としての出来云々がどうあれ一見の価値があると思う。

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