前後即因果の誤謬など

時間的前後関係を因果関係と混同する虚偽

post hoc, ergo propter hoc「このあとに、ゆえにこのために」(ラテン語) 偶然の一致による相関関係(英coincidental correlation)とも言う。これは時間的に前に起こったことを後におこったことの原因だと主張すること。
例:1991年1月湾岸戦争が始まった。同年12月ソ連が崩壊した。よって、湾岸戦争の結果、ソ連は崩壊したのである。
この例の場合、実際には2つの事件の間には直接の因果関係はなく、ソ連崩壊の原因は別にある。

複合的結果を因果関係と混同する虚偽

joint effect これはAとBがともにCの結果であるにもかかわらず、AとBとが因果関係にあると間違って考えてしまうこと。
例:私は熱があるので、咳が出る。
この例では、発熱と咳はともに風邪をひいたことが原因である。

本物ではあるが重要ではない原因の過大評価

genuine but insignificant cause これは確かにある結果の原因の1つではあるが他の原因に比べると重要ではないものを過大評価すること。
例:タバコの煙は東京都の空気を汚染する。したがって、喫煙を全面的に禁止するべきである。
確かにタバコの煙は空気を汚すが、都市の大気汚染の原因としてはもっと重要なものがあり、そちらのほうの規制をまず考えるべきだろう。

原因と結果の取り違え

wrong direction これは因果関係を実際とは逆に主張することである。
例:肺がんになると、喫煙が習慣になる。

複合的な原因の単純化

complex cause これはある出来事の原因が複合的であるにもかかわらず、単一の原因のみを取り上げること。
例:この事故は霧で見通しが悪かったことが原因で起こった。
ところが、この例で実際には運転手が飲酒運転をしていて、歩行者が信号を無視していたとしたら、ほかの重要な原因を無視していることになる。

同時関係を因果関係と混同する虚偽

cum hoc, ergo propter hoc「これとともに、ゆえにこのために」(ラテン語) これは同時に起こった複数の出来事との間に因果関係があると主張することである。
例:子供は靴のサイズが大きくなるにつれて、字を書くのもうまくなる。したがって、子供は足が大きくなると、字を書く能力が高くなるのだろう。
子供の足が大きくなるのも、字を書くのがうまくなるのも、要するに、子供がそれだけ成長しているということであって、両者の間に直接の因果関係はない。

回帰の虚偽

the regression fallacy / the regressive fallacy これは平均的な事例ではなく、極端な事例に基づいて因果関係を主張することである。なお、回帰とは統計学の専門用語で、結果Yを原因Xに説明させるという意味である。
例:昨日私はそれまで経験したことがないくらいひどい頭痛に悩まされた。そこで、ある薬を飲んだところ、症状が軽くなった。この薬は本当に効き目があるに違いない。
人間が病気にかかって何らかの治療を受けるのはたいてい最も症状が重い時である。患者は自分が受けた治療法と症状がよくなったという結果しか知らないので、本当にその治療法のおかげで症状がよくなったのか、それとも別の原因でそうなったのかどうか、自分ではわからない。患者が飲んだのは実は薬効のないプラシーボ(偽薬)で、それを本物の薬と信じたために心理的効果で症状が軽くなったということもありうるのである。

ギャンブラーの虚偽

gambler's fallacy / the Monte Carlo fallacy「モンテカルロの虚偽」 これは確率に対する誤解から生じる虚偽である。まず、例を挙げよう。
例:コインを投げて表が出る確率は50%だ。さっき投げた時は裏が出た。次は表が出るはずだ。
コインを投げて裏が出るか表が出るかということは投げる度に毎回決まることで、先にどちらが出たかということはその後に何らの影響も及ぼさない。確率50%というのは、2回投げれば1回は必ず表が出るという意味ではない。毎回表の出る確率は50%である。

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