混合診療、2016年度にも拡大?

政府が混合診療のための新たな枠組みを導入するという報道があった。
日本の医療制度下においては全ての日本国民が健康保険に加入しており、基本的にその保険適用範囲内に医療行為を受ける制度となっている。日本において認可されていない医療を受けようとすると、自由診療という形になり保険が適用されず全ての費用が自己負担となる。この制度において特に議論の的になるのは、保険適用内と保険適用外の医療行為を受けると、その全てが自由診療として保険適用外となることだ。これまでもこの患者負担を軽減するために先進的な医療行為や高度医療の一部については公的保険が使うことが出来たが、今回の政府方針はこの枠組を拡大するものだ。


混合診療については主に日本医師会が反対を唱えてきた。
その反対理由は大雑把に言えば自由診療を認めると裕福な人とそうでない人で受けられる医療サービスに差が出る事が不公平であるということだ。また、優れた医療技術は全て日本国において認可されるはずなので、認可外の(つまり保険適用外の)医療行為を受ける必要性がないとも唱えてきた。
日本医師会のウェブサイトには以下のように書かれている。
健康保険の範囲内の医療では満足できず、さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいというひとは確かにいるかもしれません。しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。
混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。
(日本医師会「混合診療ってなに?:日本医師会はこう考えています」)
確かに優れた医療行為はあらゆる人が等しく受けられるべきであるという主張もわからなくもないが、では現在の制度がその理想を実現しているのだろうか?
例えば500万円分の保険適用医療に100万円分の適用外医療を受けたいと思った場合、裕福な人はそもそも600万の全額を自己負担できることだろう。しかし、100万円分の自己負担しか出来ない人はこの医療行為を受けることはできない。だから国民全員で100万円分の保険適用外医療を我慢しましょうというのは何とも社会主義的発想ではないだろうか。

保険診療と自由診療を組み合わせて患者がより治療に選択肢を持つことができる「混合診療」を拡大することは一見いいい事のように思えるが、個人的には医師会の意見とは異なる部分で懸念点を持っている。それは、保険適用外の医療行為を保険適用内の医療行為へ移行することが困難になりはしないかという点だ。
例えば保険適用外診療行為部分に関する保険商品が販売されたとする。患者は当然、国民健康保険とこれららの保険を組み合わせて医療行為を受ける事ができるというメリットが生まれる。しかし、この適用外の医療行為が国によって認可される際に、逆にこの保険商品を販売する保険会社が抵抗勢力に成り得ることはないだろうか?
また社会保障費の増大が国の財政を圧迫している中で、逆に保険適用内の医療行為の範囲が狭められるという事が起こりえないと言えるだろうか。

ただし混合診療に反対というわけではない。自由診療を受けたくとも金銭的理由でそれが受けられずに悔しい思いを抱えたままなくなっていく患者をなくすためにも、自己の納得できる医療を受けることができるためにも、混合診療は認められるべきだと思う。ただし、それが患者、国民に取ってマイナスとならないような制度づくりだけは念頭に進めて頂きたいと願う。

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