欺瞞に満ちた平和祈念公園

もう1年以上前の話だが、沖縄県本島南部の糸満市摩文仁にある県営平和祈念公園に行った。

実は中学生の頃に修学旅行で一度訪れているのだが、その当時の印象は特に残っていないが、心新たに展示を見てなんと酷い展示内容だろうと感じた。

この平和公園には主に、全国の都道府県の慰霊塔、沖縄県内犠牲者の慰霊塔、それに平和記念資料館が設置されている。

この資料館が酷い。太平洋戦争における沖縄県内の惨状を、写真やパネル、関係者の証言や公文書、そして戦果によって破壊された様々なものが展示してある。その中を歩みを進めていくと、沖縄戦を開設する映像資料が放映されているエリアがあった。その内容がひどかった。まずその視点が沖縄へ上陸する米軍側から描かれている。その映像の中では日本軍が得体のしれない戦闘集団でもあるかのごとくに描かれ、また住民は哀れな被害者、さながら米軍は正義に味方のごとくに描かれている。そして展示の中でも繰り返し暗示されているのが、「日本政府は沖縄を見捨てた」という史観だ。

そもそもなぜこの平和資料館に隣接して、全国都道府県の慰霊塔があるのか。映像作品の中で描かれる敵、すなわち日本軍は沖縄を守るために全国都道府県から派遣された沖縄守備隊なのだ。彼らの慰霊塔のすぐ脇では、彼らを敵として描いた展示が行われている事に怒りを通り越して呆れてしまった。

呆れた点はまだある。正義の味方のアメリカ軍の占領統治時代のコーナーは、はさながら「古きよきアメリカ」と言わんばかりのノスタルジックな展示である。しかしそれが順路に追って進んでいくといつの間にか日本人をいじめる悪者に変質していく。そしていつしか本土復帰に向けた沖縄県民VSアメリカ軍という構図になっていくのだ。

この節操の無さもさることながら、なぜ沖縄がこういう悲劇的な歴史となってしまったのかの根源的な展示は無く、現在の沖縄が中国の爪牙にかかろうと状況の説明もなく、ましてや未来に対してどのような平和への行動を行っていくのかのビジョンすらない。この展示から受ける印象は、悪い日本軍、悪いアメリカ軍、かわいそうな私達という構図だけだ。

当時の沖縄の人達が何を考え、どのように行動し、そして何を願っていたのか。戦火の中で誰より平和を祈念していた、その人達の本当の気持ちとこれからの世代がどうやって平和な沖縄を「守って」行くのかについて、もっと深く学べる施設になるべきだと感じた。

コメント

このブログの人気の投稿

Dr.HOUSEの印象に残ったシーン

特攻を拒否した飛行隊長の名言